苦難の屋内飼育
私がメダカを飼いはじめたのは、実家の庭に池があり、夏はボウフラが沸いて仕方なかったのがはじまりだ。
蚊が増えるのももちろんだが、ただの溜め池になっており、枯葉が入っても誰も気に留めないので、汚い水たまりのような状態だった。
ある日ビオトープの概念を知った私は、即座にこの池を有効活用しようと決めた。
池の水をすべて抜いて掃除し、水を入れ替えてから数週間くらいのときにメダカを入れた。まだphを計るなんて知識もなかったが、水は良かったようで簡単な水合わせだけでメダカたちは元気に暮らしてくれた。
池が蘇って喜んだじいちゃんは金魚やタナゴを買ってきたりした。
真冬の分厚い氷が池を覆い、氷が溶けてからもしばらくメダカの姿はなかったが、ある日何十匹ものメダカが泳いでいたときは驚いた。メダカの生命力の強さを感じた。今年の春は採卵もして10匹以上の針子が生まれた。
そんな順風満帆なメダカライフだったのだけど、室内で飼うとなると一気に難易度が増した。池の環境を移行しただけのつもりだったのに、相次いでメダカが死んでしまった。水も水草もメダカもエビも、みんな池にいたやつだ。唯一違うのは土とフィルター。
屋外では気にすることのなかった亜硝酸塩の濃度を調べたり、水換えの頻度を気にしたり、生物濾過を実践する方法を調べたり。難易度がグンと上がった。
病気のメダカなんて今まで見たこともなかったのに、ここ一週間で4匹が相次いで病気になるのを見た。おかげで塩浴もはじめて実践した。
生き物の死は悲しい。愛情をかけたくて自分のエゴで屋内にやった結果、まだ死ななくても良かったはずの命がなくなるのは辛い。無知であるが故に死なせてしまった。
死んでしまったメダカを手のひらに乗せて花壇へ連れて行くとき、そのメダカが70円で売られていたことを思い出す。70円で買った命が、私の無知で今日もまた一つ消えてしまった。やるせなさが募る。
半年後くらいに、実家を出る予定がある。婚約者と籍を入れて賃貸物件に住む予定なのだが、賃貸では屋内で飼う可能性が高いため、今から慣れておこうとはじめたのが屋内飼育のきっかけだ(あとは冬の間も眺めたいから)。
半年後にいきなり始めるのは心許なかったので今のうちに始めたが、正直ここまで苦戦するとは思わなかった。透明な水の中に見えないバランスがあり、そのバランスをいかに整えていくか…。そして各要素の相互作用を考えなければならない。奥が深い。深すぎる。
日々試行錯誤の繰り返し。しかしそこには命が伴っている。知的好奇心と、それに振り回される小さな命。そこから学ぶことは多い。